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2020.12.16

トラベルよりイートよりGOTO 歯医者!



本格的な冬の訪れとともに新型コロナウイルス感染症が再び猛威をふるい、GoToトラベルもイートも混乱を極めている。だが、ぜひ出かけてほしい場所がある。歯医者だ。放っておけば口内の歯周病菌や虫歯菌などがコロナ由来の肺炎を重症化 菌などが新型コロナ感染症を誘引し、重症化にも繋がるという。

気温が下がり、空気が乾燥した冬を迎えて新型コロナウイルス感染者数は増加の一途をたどり、ついに第3波が襲来した。一部の医療機関でクラスター(感染者集団)が出たことから、今年3月以降は病院の受診をためらう人が増えている。とりわけ患者数の減少が顕著なのが歯医者だ。

7月下旬、神奈川県保険医協会が県下の開業歯科医に「外来患者数が減ったか」というアンケートを実施したところ、前年同月比で「減った」と答えたのは3月で72%、4月と5月でそれぞれ95%、緊急事態宣言が明けた6月でも68%に上った。さらには「患者自身が受診を控えたことによると思われる受診の遅れ、重症化事例はあったか」に対し、全ての医科の中で多く「あった」と答えたのが歯科だった。実に59%にも及んだのだ。

歯周病菌が潮型コロナ由来の肺炎を重くする

マスク暮らしとは対極ともいえる口を開けての歯科治療には、及び腰になる人がいるのも想像に難くない。だが、そういった受診控えこそ、逆に多くの問題を引き起こしている---と警鐘を鳴らすのが、鶴見大歯学部探索歯学講座の花田信弘教授である。

「主に歯周病の悪化や急性増悪が見られます。また、虫歯が進行することによって神経や歯を抜かねばならなくなる人が増えています。新型コロナの第3波を乗り切るには、むしろ口腔ケアが欠かせないのです」
花田教授は「新型コロナ感染症については分からないことが多い」と前置きしつつ、口腔内の細菌が新型コロナ由来の肺炎を重症化させる恐れを指摘する。
(33ページの図)

「実際、海外ではそのような臨床報告が上がってきています。イギリスでは細菌性肺炎患者に多くの口腔常在菌が見つかったとの報告もありました」(花田教授)
どういうことなのか。まず、新型コロナ感染症の肺炎は、季節性インフルエンザなどと同様に、次の3パターンに分けられる。

1 原発性新型コロナウイル ス肺炎=新型コロナウイル師スそのものが原因となって起こる肺炎。

2 新型コロナウイルスと細菌による混合性肺炎=ウイルス感染と同時に、細菌感染も併発した肺炎。

3 2次性細菌性肺炎=ウイルス感染症が軽快した後に、損傷を受けた肺や気管支に細菌が感染することで起きる2次感染。

このうち2と3の細菌性肺炎を起こす“犯人”と目されているのが、口腔内の虫歯菌や歯周病菌を含む細歯なのだ。

そもそも口腔は、新型コロナウイルスの“門戸”にあたる。ウイルスには王冠(コロナ)と似た形の突起があり、それが人間のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体に結合することで体内に侵入する。その受容体ACE2は人間の口腔や舌の上皮細胞に多く存在し、それゆえウイルスが繁殖しやすいのだ。PCR検査を唾液、また口腔と繋がった鼻咽腔で行う理由もここにある。新型コロナ感染症や後遺症に、しばしば味覚や嗅覚異常が起こる理由もしかり、だ。

その上、歯周病などによる炎症があると、本来は細胞の膜で覆われているACE2受容体が露出した状態になるため、より感染しやすくなると考えられている。

「新型コロナウイルスも虫歯菌や歯周病菌、さらには口腔の常在菌も、唾液や血液を介して体内に運ばれ、肺に到達して炎症を起こします。虫歯や歯周病により口内に炎症があると、歯磨きの際などに歯茎が傷つき、そこからウイルスや細菌が血中に入り込むのです。口の中には300~500種類の常在菌が棲んでいるといわれますが、口腔内にいる限りは無害なのに、別の場所にいくと異所性感染して害となり、肺炎の原因になるのです」(同)

さらに歯周病菌はサイトカインストーム(免疫暴走)を誘引し、肺炎を重症化さる。その結果、人を死に至らしめることもあるのだ。34ページの図を見てほしい。

「歯周病菌の外膜にあるエンドトキシン(LPS)と呼ばれる内毒素は、炎症性のサイトカインを大量に放出します。本来、サイトカインは免疫細胞がウイルスと戦うために分泌されるものですが、新型コロナウイルス感染症により肺に重い炎症があると、サイトカインが制御できないほど多量に放出され、“サイトカインストーム”という免疫システムの暴走が発生する。それにより自らの細胞を傷つけ、敗血症の多臓器不全に陥り、重篤な状態になる恐れがあるのです」(同)

花田教授によると、2009年に9年に世界的に流行したH1N1インフルエンザのパンデミックでは、全死亡数の最大34%がウイルスと細菌 の同時感染によるものだった。また今年8月にスイスのメディアで発表されたデ ータによると、臨床医が新外型コロナ感染症患者に予防的措置として抗生物質を投与しても、細菌の2次感染による肺炎の死亡率は15.2%に及んだという。肺炎の ー 重症化に、細菌がいかに関与しているかを示すものだ。

こうして見てくると、ウイルスや細菌が増殖する場である口腔内を健全に保つことが、コロナ禍の冬を乗り切るためには必須の条件 になるだろう。たとえば1グラムの歯垢の中には1000億個以上の細菌がいるが、食べ物のカスや歯垢が口の 中に残っていれば、それだ け細菌の数も増えて、肺炎も発症しやすくなる。

やはり虫歯や歯周病は放 置することなく、なるべく早く歯科医院を受診するのが望ましい。特に高齢者や子どもは、自力で口腔を良好に維持するのが難しく、感染症リスクの高まりが懸念される。

スウェーデン方式で感染予防

それでも歯医者に行くのが怖いという人はいるかもしれない。だが、そもそも歯科は長年、ウイルス対策を行っており、感染回避のノウハウは蓄積されている。

「歯科医師は、コロナ禍以前から、唾液や血液の飛沫による肝炎やエイズ感染のリスクに晒されてきました。そのため感染症から身を守るためのマスクやグローブ、ゴーグルの着用といった対策を徹底しています。空気の入れ替えや空気清浄をきちんと行っているところも多いのです」(花田教授)

その一つが、東京都港区の新橋歯科診療所だ。世界最先端と名高いスウェーデンの歯科治療を取り入れ、長年、完璧ともいえる感染予防に取り組んできた。同院の白井清士院長が話す。

「院内の空気除菌は常に行われる状態を維持しており、5分に1度は空気が入れ替わります。清掃も一般的にはアルコール消毒ですが、それだと殺菌効果はあっても抗菌効果がない。再び細菌が繁殖してしまうのです。その点、当院が使っているポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩は、24時間後も抗菌効果が続くという実験結果が出ています。スウェーデンでは常識で、5年前に現地に行った際、『自分たちはアルコール消毒をしている』と言ったら『遅れているな』と笑われたものです。それで当院でも取り入れることにしました」

加えてうがい、手洗い、 治療中に使う院内の水は、 すべて殺菌力の高い次亜塩素酸を活用している。

「水道水だと、治療によっ ては水が飛散し、細菌が発生します。次亜塩素酸水は高い殺菌力があるので、口 腔内を消毒しながら治療で きるのです。給水ユニット の中や患者さんが吐き出し た水も、残留塩素濃度を正 確に保つことで連続殺菌治 療が可能になる。血中にある免疫成分の次亜塩素酸と同じ成分なので、人体にも安全です」(白井院長)

また虫歯や歯周病治療にも、優れたスウェーデン方式を取り入れているという。その一つが、虫歯のカリソルブ治療である。

「歯を削らない、無痛の治療です。虫歯にカリソルブという薬剤を塗って柔らかく溶かし、特殊な器具で除去するため、健康な組織に影響を与えません。ドリルやタービンを使わないので、水や唾液が飛び散ることもない。スウェーデンでは1998年に認可され、一般的な治療として普及しています」(同)

また歯周病にはペリソルブ療法を行う。歯周病の原因である細菌をペリソルブという薬剤で殺菌してから歯石や歯垢を除去するため血管内への細菌侵入を防御できるのがメリットだ。

「大切なのは治療中の口の中を清潔に保ち、あらゆるリスクを回避して、健康な歯と歯肉を維持することなのです」(同)

「フロスしますか、死にますか」

そして忘れてはならないのが、予防の観点である。白井院長は「毎日の歯磨きでは取れない歯垢が必ず溜まってしまうので、理想は3カ月に1回、最低でも半年に1度は歯科医院で歯クリーニングを受けてください。そうすれば、虫歯にも歯周病にもなりません」と、太鼓判を押す。

白井院長は日本人の歯の健康意識が、欧米に比べ顕著に低いことを問題視してきた。

たとえば親知らずを除いた永久歯の数は5本だが、生粋のスウェーデン人は晚年でも大抵25本は残っているため、死ぬまで自分の歯で食べることができるという。 抗酸化作用を持つ野菜などを生涯、きちんと噛んで食べることにより慢性的な基礎疾患や炎症にもかかりにくくなるので、より健康的になるという相乗効果もある。それに引き換え、日本人の平均は1本と、半分以下なのが現実だ。

口腔内を健全な状態に保つには、やはり日々の歯磨きが基本。とりわけ大事なのが歯と歯の間を清潔に保つことだという。

「スウェーデンでは『フロス・オア・ノーライフ』、アメリカで『フロス・オア・ダイ』という言葉があります。訳すと『フロスしなければ人生はない』、『フロスしますか、死にますか』、歯磨きをしても約40%の汚れが歯間に残るといわれ、「スウェーデンでは『フロス・オア・ノーライフ』、アメリカで『フロス・オア・ダイ』という言葉があります。訳すと『フロスしなければ人生はない』、『フロスしますか、死にますか』、歯磨きをしても約40%の汚れが歯間に残るといわれ、その食べかすや歯垢にいる細菌は早いものだと16分で倍増します。フロスは必須と考えてください」(同)

前出・花田教授も、その意見に賛同する。
「虫歯も歯周病菌も、歯と歯の間にできることが多い。歯の表面は、たとえばリンゴなどをよく噛むだけで、ある程度きれいになります。でも、歯間はそうはいきません。35歳前後で歯周病の原因となる歯周ポケットができる人が多いので、フロスに加えて、歯間ブラシを使いましょう。また市販の口腔洗浄剤も殺菌効果があるので、定期的に使用すると効果的です」

具体的には食後3回、さらに就寝前にもフロスと歯磨きをする。唾液の分泌が止まる就寝中は細菌が約1000倍に増殖するので、起きている間はできるだけ細菌やウイルスの数を減らしておくことが重要だ。

そして朝の起床時は舌を磨くこと。舌の上に細菌やウイルスの死骸が乗っているので、それを取り除いてから水を飲んだり、食事をすることを習慣づけよう。

コロナ禍ではマスク着用と手洗いが日常の当たり前になった。これからはフロスと歯磨きも、もう一つの常識と心得たい。

本誌・鳥海美奈子

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